白雲抄 荏開津典生

  • 5月28日読了

★★★★★
父の友人である荏開津さんの随想集。実家に何冊か送られてきたのを1冊譲ってもらいました。格調高い中にユーモアもあるいい文章で、何度も読み返したい。(実際、何度か読み返した)

 ボーヤは真っ白な猫で若い時は本当に美人だった。深沈とした瞳でじっと見つめられると、私はいつも「ああ、一度でいいから人間の女の人にこういう目で見つめられたいなあ」と心中深く嘆息していた。
 ボーヤも目やにが溜まるようになり、私も白髪頭になった今ではもう仕方がない。それに私の友人の伊藤君や井上君は猫にすら見つめられたことがないらしいから、ボーヤのいる私はどっちかといえばましな方だと思うことにしている。
(P19「猫の子守唄」より)

この井上君というのが父のことですが、時々こうして父が出てくるのが無性に嬉しく有り難い。無学故に時々出てくる話題の面白さが十分に堪能できないと思うのですが、それでも十二分に面白く読ませて頂きました。